'4. 詩' Category

冬の始まり

朝一番に窓を開け

冬の始まりを知った

新聞を取りに玄関へ出る

昨日と変わらないはずの鳥の声

青空を見せない低い雲

体に冬が忍び込んで

ふいに記憶をよみがえらせる

いつか受けた痛み哀しみ

今日はそれらを空へ放そう

大人たちの会話

それらは本当の言葉じゃなかったから
今はどこにも残っていない

それらは私を動かさなかった

たぶん他のすべての人も動かしていない

だから消えた

そういう言葉が続くことに

やがて疲れ切ることもわかっている

ではあの空間の意味は何だろう

名前

自分の名前を思い出せない
どこから来たのか

どこへ行くのか

私はもはや人間ではない

人間には知識がある思考がある

私には何もない

漠然と切なさが漂っている

私は切なさに近い生き物になってる

それは既に哀しみですらない

雪が降らないかなあって
思ってしまった

蒸した残暑の夜

発情した猫の鳴き声

真夏とは違う虫の声

たとえば今 雪が降ったなら

首が固まってしまうまで

上を向いて、口をぽかんと開けていよう

誰も見てない真夜中の出来事

せなか

何かつぶやいて彼は空を仰ぐ
目を細める

空は気が遠くなるくらい

青くって高いところにある

大丈夫

やがて扉を開ける

歩き出せたなら、大丈夫

私は信じて背中を押した

彼のつぶやいた言葉、知りたかった

彼は何度も振り返って手を振る